平等王は、百ケ日の法要を行う遺族の心をみています。この時、遺族に欲やむさぼりの心がなければ、故人も自らも来世で天上界に行けるようになります。
また、生前の罪が重く地獄に堕(お)ちた故人も、遺族が一周忌の法要を行えば、都市王によってその罪は許されます。
そして、2年目の三回忌が最後のチャンスです。大罪でなくても飲酒や嘘などには覚えがある私としては、地獄送りになる可能性もありますよね…? そう思うと、いずれ自分が亡くなった時には三回忌の法要まできっちりと行って欲しいと切に願います!
ただ、五道転輪王は地獄ばかりでなく、天上界もチェックしています。四十九日に天上界行けてラッキーと喜んでばかりはいられないようです。
天上界に行った後でも、そこで悪さをすれば地獄に落とされることがあるのだとか。有名なのは孫悟空。天上界で悪事を行い、その罪を受けましたよね。
藪入りとはどんな意味?
藪入りとは?
藪入り(やぶいり)とは、江戸時代に広まった風習です。この時代は、商家などで住み込みで働いていた奉公人や女中さん、嫁いだお嫁さんは、簡単には実家に帰ることが許されない時代でした。
そんな中、奉公人やお嫁さんが大手を振って実家に帰ることが許された日がありました。それが『藪入り』の日です。
藪入りは年に2回、1月16日と7月16日です。小正月や盆が明け、大忙しだった家の用事が一段落するのがこの日なんです。そして、「いつもご苦労さん」と奉公先や嫁ぎ先からお小遣いやお土産をもらい、喜んで実家に帰ったそうです。
お正月やお盆に実家に帰省する風習は、ここから始まったそうですよ。
初閻魔との関係は?
1月16日の藪入りの日は、『初閻魔』の日にもあたるので、日々働いている奉公人やお嫁さんたちも、この日ばかりはと、えんま詣でに出かけました。娯楽が少ない時代ですので、縁日などのお祭りは、この時代の人達にとって心からの楽しみになっていたでしょうね。
この薮入りと初閻魔の関係については諸説あるようです。ご紹介したように、それぞれ別の起源で始まり、たまたま同じ日であったという説。
また、藪入りの期間は「地獄の鬼たちもさすがに仕事を休むだろう」という事で、その間に閻魔さまにお参りに行こう、と始まったのが「初閻魔」という説。
逆に、地獄の釜の蓋が開いて鬼も休む日なんだからという事で、その日は奉公人も休みを取らせようと「藪入り」が始まったという説。
いずれにしても、藪入りと初閻魔は切っても切り離せないようで、初閻魔の縁日を大切に思い、多くの人が心待ちにしていたことが感じ取れますね。
初閻魔が行われるお寺は?こんにゃく閻魔とは?
さて、ここまでお話してきた初閻魔。一体どこのお寺に行けばいいのでしょうか。
それでは、初閻魔を楽しめる各地の寺院をご紹介します!
初閻魔を楽しめる寺院
法乗院 深川えんま堂(東京)
390年以上の歴史のあるお寺。日本最大の閻魔王像があることで有名です。閻魔さまの説法も聞くことができます!本堂に展示されている全16枚の地獄・極楽図も圧巻です。
- ご開帳:毎月1日16日、大晦日~1月16日 現在中止。年末お正月も開帳するかまだ未定
- 初閻魔:1月16日 閻魔天大護摩供(ごまく) 一般参加中止の可能性あり、まだ未定
- 出 店:15年ほど前から出店はなくなったそうです。参拝者が減っているせいですね…
観音院 長円寺(京都)
幕末には新選組も初閻魔のお参りに訪れたお寺。現在は壬生の狼の切り絵がデザインされたお札が頂けます。
- ご開帳:2・3月、8・9月以外の10時~17時ならいつでも閻魔像を見ることができます。
- 閻魔札朱印授与期間:4月~7月末、10月~1月末
- 初閻魔:正月1日~3日 12月中にHPにて来年の開催の有無を公表するとのことです。この日はお札でなくご朱印帳に直接書きのご朱印が戴けます。
- 出 店:昔はあったそうですが、現在はないそうです。
- 夜閻魔:7月に開催 申込制 コロナ禍にて中止しています。
勝専寺(東京)
レンガ造りの珍しいお寺で、赤門が有名です。日ごろの罪を許してもらえるご利益の他に、ぜん息、扁桃腺炎などのノドの病気に良いといわれています。
- ご開門:1月16日、7月16日 年に2回しか開かない赤門です。
- 初閻魔:『閻魔開き』と呼ばれています。1月16日、7月16日
- 出 店:多くの出店が並びます
現在も多くの人で賑わっているのが分かりますね。
ここで、初閻魔は行ってはいないのですが、地獄寺とも言われるちょっと変わったお寺も紹介させてください。
全興寺(大阪)
地獄の様子が分かるシアターや、極楽度・地獄度チェッカーなどがあり、大人も子供も楽しみながら命の大切さを学べるお寺です。地獄の世界を体験したい方はぜひどうぞ。
こんにゃく閻魔とは?
東京にある源覚寺(げんかくじ)の閻魔さまは「こんにゃく閻魔」と呼ばれ、目の病気にご利益があることで多くの信仰を集めています。このお寺の閻魔さまの右目は、割れて黄色く濁っています。
それにはこんな言い伝えがあります。
1700年代、眼病を患った老婆がいました。その老婆は、源覚寺の閻魔さまを毎日拝みました。すると夢の中に閻魔さまが現れ「願掛けの満願成就の暁には、私の両目の内、ひとつを貴方に差し上げよう」と言われたそうです。
老婆の目は治りました。そして、閻魔さまの右目は盲目となったのです。老婆は感謝のしるしとして好物の「こんにゃく」を供えつづけたということです。
このことから、源覚寺の閻魔さまは「こんにゃく閻魔」と呼ばれるようになりました。
7月16日、閻魔縁日。②
次に東京ドーム近くの源覚寺、通称こんにゃくえんま様へ。
お婆さんの眼を治したことで、片目が黄色になった閻魔様です。
閻魔縁日限定御朱印を2体拝受しました。一枚は切り絵になってます。#閻魔縁日 #御朱印 #源覚寺 #小石川 pic.twitter.com/yXasZpkN0n— ayu-me (@ayume11302017) July 16, 2021
今でもお供えにこんにゃくを持参する方もいらっしゃいますよ。
源覚寺(東京)
- 初閻魔:『閻魔例大祭』1月15.16日、7月15.16日 現在のところ2022年1月の閻魔例大祭は開催予定です。
- ご開帳:例大祭の日 十王図を拝観できます
- 出 店:なし。コロナウイルス感染拡大前は門前でこんにゃくを振る舞っていました。
こんにゃく閻魔さまのご利益に預かりたいけど、まだまだ遠出できないという方には、お札やお守りのネット販売もされていますので、ぜひご覧くださいね。
源覚寺公式販売サイト
初閻魔の開催について、電話で問い合わせしたどのお寺も、非常に丁寧にご親切に対応してくださいました。
お寺に電話するなんて、少し勇気がいりますが、コロナの情勢の変化によって例年通りにいかないことが多い時です。なにかあればお気軽に直接お問い合わせすることをおすすめしますよ。
感染が収まってきていますが、お出かけの際は感染対策をしっかり気をつけてくださいね!
初閻魔のみどころは?屋台はでるの?
初閻魔の1番のみどころ・魅力は、やはり「いつも以上に閻魔さまのご利益を頂ける日」ということです。初閻魔のこの日に、しっかりと閻魔さまとのご縁をつないで、あの世や来世も安泰でいきたいものです。
次に、初閻魔のみご開帳される地獄極楽絵図や十王図。お寺によっては常に拝観が可能な場合や、絵図が無いお寺などもありますので、ご確認してお出かけくださいね。
初閻魔に屋台がずらーっと並んだのは、どうやら一昔まえのようです。現在は屋台が出ているお寺はあまりないようです。しかし、本来の目的は閻魔さまへのお参りですから、ちょっと寂しいですけど屋台がなくても問題ないですよね。
初閻魔のお参りの作法は?
初閻魔のお参り方法は?
初閻魔だからと、特別に考えることはありません。一般的なお寺のお参りの方法で大丈夫ですよ。
お寺の門前で帽子などをかぶっている場合には取り、一礼して、敷居を踏まないように気を付けて門をくぐります。
閻魔さまの前では、お供えやお賽銭をして手を合わせましょう。手を合わせる際にお数珠があると、なお良いですね。
そして、日頃の罪を懺悔(さんげ)して、心を洗い流し、新年の無事をお願いしましょう。また、供養したい故人がいらっしゃる方は、その方の冥福をお祈りしましょう。
神社との違いは?
お参りの際に、お寺では、手を合わせる際に柏手(かしわで)は打ちませんので、そっと手を合わせて拝みましょう。
神社では、2礼2拍手1礼するのが慣わしですので、間違えないようにしましょう。
まとめ
今回、初閻魔についてご紹介したポイントをまとめてみましょう!
1 初閻魔とは?ご利益は?
- 毎月1日16日は閻魔さまのご縁日。その中でも1月16日は『初閻魔』と呼ばれています。
- この日はお寺で閻魔堂のご開帳やお祈りなどが行われます。
- 閻魔さまにお参りすることで、日頃の罪を許してもらえる、眼病平癒のご利益があります。
2 閻魔様と十王
- 閻魔さまと共に地獄の裁判を行っている10人の王のことを『十王』と呼びます。
- 十王たちは、亡くなった方の生前の罪を裁いて、地獄に行くかどうかや、来世の行き先を決めたりします。
- その中でも閻魔さまが特に有名なのは、来世の行き先を決める中心的な存在だからです。
3 藪入りとはどんな意味?
- 藪入りは、小正月や盆が明けた1月16日と7月16日の日のことです。江戸時代に住み込みで働いていた奉公人や、嫁いだお嫁さんが、唯一実家に帰ること許される日でした。
- 1月16日の藪入りの日は、『初閻魔』の日にもあたるので、この日ばかりはみんな仕事を忘れて、えんま詣に出かけたそうですよ。
4 初閻魔が行われるお寺は?こんにゃく閻魔とは?
- 法乗院 深川えんま堂(東京)
- 観音院 長円寺(京都)
- 勝専寺(東京)
- 全興寺(大阪)
- 源覚寺(東京)
ここの閻魔さまは「こんにゃく閻魔」と呼ばれています。昔、閻魔さまに目を治してもらった老婆が、お礼にこんにゃくをお供えしたことが始まりです。
5 初閻魔のみどころは?屋台はでるの?
- 初閻魔は「いつも以上に閻魔さまのご利益を頂ける日」ということが魅力です。閻魔さま像をしっかりと拝みましょう。
- お寺によって地獄極楽絵図や十王図を特別拝観できる場合もあるので要チェックですよ。
- 現在は屋台が出ているお寺はあまりないようです。
6 初閻魔のお参りの作法は?
- 一般的なお寺のお参りの方法で大丈夫です。お供えやお賽銭をして、柏手(かしわで)は打たずにそっと手を合わせて拝みましょう。その際にお数珠があると、なお良いです。
- 閻魔さまの前では、日頃の罪を懺悔(さんげ)して、新年の無事をお願いしましょう。
貧困や疫病などで苦しむことの多かった昔の人にとって、極楽浄土への憧れや、死んだ後の地獄への恐怖は、計り知れないものだったんでしょうね。
閻魔さまにお参りすることで、自分や親しかった故人の行く末をいい方向へ導こうと努めていたんだなぁ、と感じます。
現在は、初閻魔という言葉も聞き馴染みがなくなり、法要や法事も形だけで本当の意味を知っている人が少なくなっているように思います。
今回調べてみて改めて、死後の世界や、故人の供養について考えることが、今の日本人には必要なんだろうと思いました。
日々の生活の中で犯してしまう、小さな嘘や裏切り、欲に溺れたりお酒に飲まれたりすることなく、自分を正して生きていくには、こういった教えが大事なんですね。
みなさんも、2022年の初閻魔には、ぜひ閻魔さまに日頃の罪を謝りに行きましょう。そして、新年を無事過ごせるように、あの世で地獄に送られないように、お願いしましょうね!
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